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「グローバル経営CREDO」

〜LG電子のインド市場における成功ストーリー〜



 書籍名:韓国人CEO輸出第1号 金クァンロの『グローバル経営CREDO』
 発行:2009年6月15日(@韓国)
 出版社:シアル平和(sealpeace)
 著者:金グァンロ(K.R. Kim)
 ページ数:236
 重要部分の抜粋・翻訳:HIBP


インド(India)市場でのLG電子のシェア(2010年5月Gfkデータ基準)は、エアコン1位、冷蔵庫1位、洗濯機1位、電子レンジ1位など家電分野においてトップを握っています。CNBCとAC Nielsonが調査した「消費者ブランド」(Awaaz Consumer Awards 2010)でも家電の最高のブランドとして選定されており、これは6年連続の首位でした。

このようにLG電子がインド市場では、サムスン電子やパナソニックなどの競合メーカーより強くなっている背景には、1997年にLG電子のインド法人長として就任し、以降2008年までにインドを管理してきた金グァンロ氏(1974年:LG電子入社、1997年〜2004年:インド法人長、2005年〜2008年:東南アジア地域代表(社長))の大きな貢献があると言えます。

本書籍は金グァンロ氏が2008年にLG電子を退職した後、LG電子のインド市場での成功ストーリーを本人の経験を基に書いた本です。以下には、出版社より許可を得て、本の一部の内容を翻訳して掲載しております。日本のメーカーのグローバル経営に少しでも参考になればと思います。

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― インド最大家電メーカービデオコンは なぜ私を選んだのか?― 
それは私の経営哲学と実践による成功が認められたからであろう。それならば、一企業の平社員だった私が社長となるまで、30年余りに渡って数々の国での勤務を通して培ってきた経営哲学とは何であろうか。土壌の枯れた国と言われるインドにおいて、日本の電子機器メーカー勢を退け、インド市場の30%以上を占める一等企業に成長させた秘訣は何であろうか。

<著者>
1946年忠清南道カンギョン生まれ 京畿高・ソウル大学法律学科卒業後、74年LGグループに入社。30余年に渡ってアメリカ、ドイツ、パナマ、ドバイ、インド等で海外営業を担当。97年のLG電子インド法人の設立から4年後、インド市場シェア1位企業に成長させ、LG電子「インド神話」の主役となる。LG電子西南アジア地域代表(社長)を歴任し、2008年LG電子東南アジア地域代表(社長)を最後に引退。その後、顧問として活動。
2008年5月インド最大家電企業ビデオコン(Videocon)のCEOに就任し、「(韓国)国内初のCEO輸出第1号」となった。

インド勤務の韓国企業人としては初めて政府から「錫塔産業勲章」が与えられ、KBS『神話創造』の主人公として、またSBSスペシャル『インド競争』では世界経営人として注目を浴びた。


<はじめに>

私は去る2008年5月7日、インドの最大家電メーカービデオコン(Videocon)の副会長兼社長(Chairman & Managing Director)として就任した。韓国大企業のCEOが外国大企業の最高経営者としてスカウトされたのはこれが初めてのことだという。インドの企業文化から見てみても外国人が大企業のCEOとなったのは異例のことだ。勤務していた会社と競争関係にある企業の最高経営者として再出発するということに、眉をひそめる人もいるかもしれない。私は韓国の某日刊紙のインタビューで、自らの意思を次のように表明した。
「ヒディンク監督は祖国のオランダやヨーロッパで培った指導力を韓国で発揮した人物だが、彼のことを売国人と呼ぶ人はいない。インド企業で成果を出せば韓国企業はもちろん、韓国の国家イメージも改善されるだろう」

「大韓民国のテコンドーの師範が外国チームの監督を引き受けることは韓国に背くことではなく、韓国のテコンドーのレベルの高さを示すことだ。今後新興国家として成長していくはずのインドの地において、韓国式の経営の素晴らしさを伝えたい」

インド最大家電メーカービデオコンはなぜ私を選んだのか? それは私の経営哲学と実践による成功が認められたからであろう。 それならば、一企業の平社員だった私が社長となるまで、30年余りに渡って数々の国での勤務を通して培ってきた経営哲学とは何であろうか。土壌の枯れた国と言われるインドにおいて、日本の電子機器メーカー勢を退け、インド市場の30%以上を占める一等企業に成長させた秘訣は何であろうか。

成功の最大の要因は、様々な国での経験を通じて国際化された私の経営哲学だった。中東、ドバイ、アメリカはシカゴとニュージャージー、中南米のパナマ、そしてドイツのデュッセルドルフなどで蓄積した15年間の外国生活と営業経験がなかったら、インドでの成功はなかったと言えるだろう。
以前からこの経験をもとに本を書いたらどうかという誘いを受けてはいたが、私は長いこと躊躇していた。インドでの10年の実績を大したこととは思っていなかったからだ。しかしグローバル化に向かってパワフルに躍進する韓国人経営者や後輩たちの力に少しでもなれたらという思いから、勇気を出すことにした。

本を書くというのは容易いことではない。一時間に原稿用紙一枚を書くペースで、一日数時間パソコンの前に座ってみて、キーボードを打つことがどれだけ大変なことか気づかされた。しかし書いているときは幸せだった。また書くということがどれだけクリエイティブな行為かということにも初めて気づかされた。私の中に潜んでいた創造力を見出したからである。
この本にある内容はただ「机上」の優れた経営理論を整理したものとは違う。過去30余年の間に経験した数々のチャレンジと成功、そして手痛い失敗から生み出された事実を書いている。特にこの10年の間にインドで成し遂げた「成功神話」の経営哲学と体験を分かち合おうという思いから、心を込めて書き綴るものである。

私はこの本において、一企業が成功するためにはその企業の構成員を動かす文化、そしてその組織の哲学または信念(Credo)がとても重要だという事を強く主張したかった。すべての構成員がオーナー意識をもって団結している組織は市場において勝つことが出来る。この本は、単なる企業だけでなく、成功する組織のための経営哲学と組織文化に関する本である。

誌面を通じて感謝の意を伝えなければならない方々が多くいる。まず革新(Innovation)、オープンマインド(Openness)、同伴者精神(Partnership)という企業哲学を創りあげ、「信じて任せる経営(Empowerment)」の実践のためにご尽力されたク・ジャグン会長(現LS会長)とインドでの多大な投資と革新を支援し激励してくださったキム・サンス副会長(現韓国電力社長)に感謝したい。 お二方の勇気と洞察力がなかったら劣悪な環境のインドへの進出もなかったであろうし、今日のような成功もなかっただろう。また、人間尊重の経営と顧客のための価値創造を企業の理念に込め、その実践を自ら示してくださったク・ジャギョン名誉会長とク・ボンム会長にも限りない感謝の意を申し上げたい。二人の会長の下で34年の間学んできた人間中心の経営哲学のお陰で、いまの私がいる。
そして、インドで私とともに苦労してくれたすべての同志たちに感謝する。彼らの汗と涙の苦労がインド成功神話の源となった。最後に、この本の始まりから終わりまで激励し支援してくださったCR平和のキム・ジン博士に感謝申し上げたい。


<目次>

はじめに

Part1 Globalization  「知れば好きになり、大きな流れが分かる」
Credo1 住めば都(自分の住んでいる所が天国だ)
Credo2 現地人の長所をいち早く把握せよ
Credo3 その国の労働市場をきちんと理解せよ
Credo4 幸福とは他人を温かく気遣うことにある
Credo5 親環境的(エコロジー)な生活態度が必要だ
Credo6 違うということは美しいことである

Part2. Openness  「自分を無にした時、相手が見える」
Credo7 世界が隣人だ
Credo8 信じることが人を動かす
Credo9 最高経営者(CEO)は最高破壊者(CDO)である
Credo10 能力より重要なのは魂と心

Part3 Empowerment  「構成員(メンバー)を主人(オーナー)にする」
Credo11 より多くの自由を与えなさい
Credo12 社員は使い捨ての紙切れではない
Credo13 勝つ経営は会社文化から始まる
Credo14 リーダーの力を見せつけよ

Part4 Innovation  「絶え間なく変わり続けなければならない」
Credo15 会議が多く、会議が長い会社は潰れる
Credo16 肯定的な監査が会社を救う
Credo17 固まれば死に、離れれば助かる
Credo18 グローバル化は徹底した現地化の成果である
Credo19 販売の運命は購買に掛かっている
Credo20 苦しい時ほど変わることで生き残る
Credo21 社員より会社が先に変わらなければならない
Credo22 失敗した者に福があるとしたら、大きな学びがあるからだ

Part5 Marketing  「数字が人格だ」
Credo23 格好のいいマーケティングは要らない
Credo24 逆走するマーケティングを試せ
Credo25 マーケティングは新しい用語との闘いだ
Credo26 ブランドに対する消費者認知度を上げろ
Credo27 アフターサービスがマーケティングの完成だ

エピローグ:両手で経営せよ

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Globalization  『知れば好きになり、大きな流れが分かる』
Credo 1 『住めば都(自分の住んでいる所が天国だ)』


私は企業経営においていわゆる“海外派”に近い。30年以上に渡って一つの会社で働いてきたが、そのうちのほとんどを外国で過ごしたという意味でもそうと言えるし、私自身もグローバル志向の人間である。
これまでの30年近い外国暮らしを通じて私はグローバル化へと体質改善され、グローバル化は私の経営哲学の重要な糸口となった。そしてその哲学が実践され、具現化されて実を結び始めた場所こそが、インドなのである。
1997年1月の初め、私はLG電子インド法人長に赴任した。1977年から中東のドバイから始まり、シカゴ、ニュージャージー、南米のパナマやドイツのデュッセルドルフなど、多様な外国生活を積んで20年になる年だった。

しかし、インドに到着してみると現実は私の想像をはるかに超えていて、ただ驚くしかなかった。そのカルチャーショックたるは深刻だった。インドへ渡る前に中南米の奥地ともいえるボリビアやペルーの地方も訪れてはいたが、インドのように劣悪な地は初めてだった。外から来た者にとってインドは住むこと自体が難しい場所だった。衣食住の基本的な生活すら満足には出来なかった。企業活動は二の次で、生存が脅かされる程だったのだ。

問題はインド生活の不便が私だけの苦しみではなく、韓国人社員とその家族たちの苦しみでもあるということだった。私はこの苦しみを克服するのに、まずは韓国人の夫人たちに気を配った。不便な生活に苦労している夫人たちを元気付けるために、出来る限り夫婦同伴で集まる場を持つようにした。また、一緒に旅行する時間を多く持たせたりもした。

個人であれ企業であれ、グローバル化を成し遂げたいのであれば他国の宗教に対して理解し、心を開かなければならない。また、その宗教文化が持つエネルギーを原動力として活用することが非常に重要だ。

インドで会社を経営しながらインドの宗教文化を体験し、また理解しようとしたその努力はグローバル化に向けてのカンフル剤となった。

少数派のイスラム教やその他の宗教が差別待遇を受けているかのように感じさせる行動や決定は絶対に禁物だった。もしこのような宗教に対する理解なく会社の経営論を推し進めていたら、とてつもない対価を支払うことになっていただろう。
宗教が商品デザインに影響を与えることもあった。イスラム教徒たちは緑色が好きなため、イスラム教徒居住地域では緑色の製品がよく売れる。


Credo2 『現地人の長所をいち早く把握せよ』


事業は組織とシステムで動くものだが、その中心には「人」がいる。そのため人に対する理解がとても重要となる。外国で事業をするときは、その国の文化を理解すると共に、その国の人々の持つ長所や特徴などを早く把握するべきである。

まず一つ目に、インドは英語が公用語の一つであるため、英語の使用が日常化している。

二つ目に、インドが多文化社会という点はグローバル化においての重要な長所である。

三つ目に、インド人は数字に強く、論理的且つ理論的だ。彼らの思考は単純ではない。

この外のインド人の長所の一つは、我々よりはるかに我慢強く、すぐ怒ったりすることがないという点だ。

インド人は世界中の誰よりもプライドの高い人々だ。自分たちの歴史と文化に対する自負は勿論のこと、世界中で活動しているインド人たちの活躍に対する誇りも相当なものだ。


Credo3 『その国の労働市場をきちんと理解せよ』

企業はそれが属する社会の労働環境と影響し合っている。そのため一つの企業がグローバル化の努力の中でその地域に根を下ろし、経営活動を成功させようとするなら、現地の労働政策を正確に把握しなければならない。
多くの人々がインドの労働政策は色々と規制が多く、社員を解雇するのも大変なため事業を行うのは難しいと言う。これは部分的には事実といえる。しかし、私がこれまでの10年間で見てきたインドの労働現場はかなり合理的で、企業を妨害しようとするような積極的な行動はない。

インドでは現場勤労者達の離職がほとんどない一方で、管理・事務・研究そして販売担当社員といういわゆるホワイトカラーの離職率は高い。

インド人には終身雇用という概念がなく、自己啓発のために方々に職場を移ることを当然とし、良しとする側面がある。

インドで優秀な従業員は世界中のどの国でも見事に仕事をこなすことが出来る。私は過去10年間で100人以上のインド人技術者を韓国の研究職に送り込んだ。


Credo4 『幸福とは他人を温かく気遣うことにある』

外国で企業活動をするうえで、その国の人に対する温かな愛情なしでは絶対に成功することは出来ない。


Credo5 『親環境的(エコロジー)な生活態度が必要だ』

多くの会社が親環境企業として自らの役割を遂行しようと努力している。これは非常に望ましいことだ。しかし、ここで更に考えなければならないのは、会社自体が親環境的文化として変貌しなければならないということだ。つまり、環境運動のために寄付することも重要だが、会社周辺、工場環境を親環境的なものに変えていくことが何より重要な貢献だということである。
私は1998年の工場竣工から10年間、毎年数百株ずつ一生懸命に木を植え、世界で一番木の多い工場を作ろうと努力した。


Credo6 『違うということは美しいことである』

世界市民として隣国に関心を持ち、愛情を持って外国人を見つめる気持ちと態度こそが、優れた市民への第一歩であり、優れた世界企業の担い手になる道である。企業は企業として社会的責任を果たすことが時代の変化に乗ることであり、それが企業のグローバル化に貢献する結果を生む。


Part2 Openness 『自分を無にした時、相手が見える』
Credo7 『世界が隣人だ』


グローバル化の波の中で企業が成功するためには、構成員自身がまず優れた世界市民にならなければならない。企業は社会の一員だ。よって、我々の社会全体が優れた世界市民で埋め尽くされれば、やはり優れた世界企業或いはグローバル化した企業が生まれる。


Credo8 『信じることが人を動かす』

インドは世界のどの国よりも人への信頼性を試す国だ。なぜならば、外国人の間で「インド人は信じられない。信じてはいけない」と考える風潮があるからだ。
私はインドで多くの韓国人がインド人を厳しく糾弾する姿を数え切れない程見た。また、彼らはインド人の言葉や行動を信じず、彼らの挙動に対して不満を持っていた。このような態度と行動は、相手の長所を見えなくするという悪循環を生んだ。
私はむしろ、長い間インドの商人と取引をしながら彼らの長所を沢山見てきた。彼らは質素でつつましく、兄弟家族の関係を大切にし、親切である。私はインド人が優秀な素質と忠誠心を持ち合わせた誠実な人たちだと信頼し、彼らとともに一等企業を創りあげていった。その反面、彼らの短所はあまり浮かんでこない。私が10年間共に勤務したインド人社員たちに対してもそれほど大きな短所を見つけられなかったのは、満たされた気持ちで彼らを見つめてきたからだ。

インドでの10年間で一番聞かれたのが「本当にインド人を信じるのか?」ということだった。

「本当にインド人を信じるのか?」という質問に、私はいつも「信じる」と答えた。

インドで会社を経営している当時、本社が立てた重要な経営哲学は「革新(Innovation)」「オープンマインド(Openness)」そして同伴者精神(Partnership)だった。
この中で私はオープンマインドが一番重要だと考える。なぜなら、開いた心なくしては「革新と同伴者精神」は不可能だと信じているからだ。


Credo9 『最高経営者(CEO)は最高破壊者(CDO)である』

それならば開かれた経営とは何か。どうすれば開かれた経営の望ましい姿だといえるのだろうか。

「組織内の多様性を認めよう」

「違う考えを受け入れる勇気が必要だ」

「一人一人を尊重せよ」

「「許し、寛容になれ」

「“徳長”が必要だ」

「変化を積極的に受け入れる柔軟性を発揮せよ」

「協業と協同の美徳を活用せよ」


Credo10 『能力より重要なのは魂と心』

新しい事業を始めるときは一から十までの全てを新しく学ばなければならない。特に外国での事業の場合、一から詳しく学ぶ過程が必要である。学ぶうえでの最良の方法は、その事業において経験豊富な現地の専門家を選び、彼の経験を活用することだ。勿論、現地の業者との合作も一つの方法である。しかし、外の会社との合作法人になる場合、リスクはとても大きい。

正しい人選のための最初の足がかりは、人事を総括する人事責任者を間違いなく選ぶことから始まる。この時の選抜基準が重要となる。
人事責任者を選ぶ際に私が最も重視した選抜基準は、頭の良い人よりも心が温かく情熱的な人物かどうかということだ。

結果的に私は、重要な人事総括責任者を選ぶのに成功した。彼は10年が過ぎた今でも会社の人事担当の重役として勤務している。私はこれまで、この人事総括の責任者が選んだ中間管理職から役員までの120名余りを選抜するのに一度も関与したことがない。新入社員が挨拶に来たら、「お会いできて嬉しいです。入社を歓迎します」と言うのが全てだった。
誰かを特別に指名してスカウトしたのではなく、平凡な人材採用会社を利用して採用したという点も重要だ。振り返ってみると、良い人を採ったのではなく、良い人に育てたというのが正確なところだろう。


Part3 Empowerment 『構成員(メンバー)を主人(オーナー)にする』
Credo11 『もっと多くの自由を与えよ』


オープンマインド、開かれた経営が会社内で一つのシステムとして実を結ぶためには実際に信じて任せる経営、つまり権限の委任を通じて委任経営を実現しなければならない。

権限の委任は組織内における上司と部下、または同僚間に限られた話ではない。部署と部署、組織と組織間の牽制と均衡を通じても成される。これは相互発展的な合意を導き出すものだ。

ピザミーティングとは、従業員たちとピザを食べながら会社経営に対する彼らの意見をヒアリングする時間のことを言う。10年間で私は休むことなくほぼ毎週土曜日の昼に従業員たちとピザを食べながら対話を交わした。土曜日が休みの週は金曜にピザミーティングを開いた。およそ20名の部署社員と管理者が参加し、話したいことや建議事項を自由に述べた。部署社員たちには普通このピザミーティングの機会が3〜4ヶ月に一度やってくる。この時間を通じてそれぞれの部署の社員たちの多様な意見やアイディアを聞くことが出来た。

一つ目に、権限の委任は自分から進んで決定させることである。人は誰でも自分で決定したことにはより責任を持ち、またその仕事に遣り甲斐を感じる。

二つ目に、権限の委任のためには待つことが出来る、いわば忍耐力がなければならない。ある仕事をするとき、人にやらせるほうが楽か、それとも自分が直接するほうが楽か?

三つ目に、権限の委任は社員に学びと体験の機会を与えることである。リーダーというのは大抵、社員や組織員らが仕事が出来ないと、彼らを咎め、また不平を言うことに慣れてしまっている。しかしその前に彼らが多くのことを見て学ぶ機会を提供したのかどうかを振り返ってみなければならない。

四つ目に、権限の委任は経営の結果を重視しつつ、過程に多くの自由を与えるものである。権限を与えるということ、それは言い換えれば社員たちにより多くの「自由」を与えることである。


Credo12 『社員は使い捨ての紙切れではない』

オーナー意識を育てる実践のうちの一つは、社員が会社で興味を持って楽しく仕事が出来るよう、福祉に配慮することだ。

現場の社員たちの家庭を訪問することは、彼らが愛社精神を持つことに繋がる良い文化である。韓国的な情緒から見て、それほど好かれるとは思えない会社文化だが、インド人たちには大変好評だ。ちょっとした手土産を持って出向き、懸案事項などを聞きながら一緒に問題解決に取り組むのである。

インドで経営活動を行いながら私が掲げた重要なスローガンの一つは「私の家族(My family、私の会社(My Company)、そして楽しい職場(Joyful Work)」だった。

一年に二回以上インドの管理職たちを韓国本社の営業や工場に訪問させ、韓国本社と大きな流れを共有出来るよう積極的に奨励し、義務化するかの如く行った。
インドの社員たちにとって、他社と最も差別化されている点の一つがまさにこの外国出張を通じて自己啓発の機会が持てるということだった。


Credo13 『勝つ経営は会社文化から始まる』

会社設立以来、組織文化に対する満足度を知るために30%の従業員を無作為に抽出して毎年社員の世論を調査した。それを通じて社員の声を聞き、不満や足りない点を改善しようとしたことが人事部署の大きな業績だと考える。
この調査の結果、社員が最も重要視していたのは、まず一つ目に会社が自分を啓発出来る組織だということだ。

二つ目に、社員は最高責任者を信頼する文化を大切にしていた。

三つ目に、我が社の社員は外の競争他社とは違い、参加意識が高かった。

我が社は工場の周囲にある貧しい地域の学校に毎年学用品の支援をしてきた。またニューデリー近隣のノイダとモンバイ近隣のプネの近くにそれぞれ小さな病院を立て、運営した。英語で病院(Hospital)と言わず、薬品配給所(Dispensary)としたが、医者もいて簡単な手術も出来る。貧しい人々の為に無料ではないものの、わずかな治療費だけで運営した。この小さな病院は地域の住民にとって大きな助けとなり、社員にとっても遣り甲斐の持てる貴重な社会活動となった。

インドで経営活動をした10年の間、100名以上の韓国人学生をインターンとして採用した。インターン支援事業では、インターン社員が往復旅費を自己負担すれば、会社が宿泊場所と食事を提供する。その代わり給与はない。本人の選考や希望に沿って部署別にプロジェクトを作り、実施した。学生たちはそのプログラムを遂行していくなかでインド人たちに手伝ってもらい、毎週自分が行った仕事の内容と評価を整理して英語で発表した。


Credo14 『リーダーの力を見せつけよ』

「他人を尊重せよ:尊重のリーダーシップ」
インドで初めて事業が始まった1997年、韓国から派遣されてきた社員たちが貧しいインドを見下すようなことがないよう、絶えず努力した。そのための一番の方法は、インドの従業員を中心に会社を運営することだった。韓国からの派遣社員たちにとっては納得のいかないことだったが、会社の主人となるのはインド人社員であり韓国から来た派遣社員はアドバイザーであるという原則を守ることに心を砕いた。

「判決を下すな:アドバイザーとしてのリーダーシップ」

「一歩後ろに引け:忍耐のリーダーシップ」 
私は経営活動をしながら勤勉で誠実であろうと努力した。10年間に渡って、毎日家を6時に出発し、7時に工場到着、そして30分間テニスをしてシャワーを浴びた後、8時に机についてインターネットで世の中を見渡し、9時から業務を始めるという習慣を守った。インドにおいて社長とは「全社員の中で一番遅く出勤する人」であるというのが一般的な認識だが、私は一番に出勤した。誰もいないオフィスで静かに一日の始まりを迎える気分は本当に清清しいものだ。

「余裕を持て:余裕のリーダーシップ」

「施せ:寛容のリーダーシップ」

「遠くに置いて見ろ:洞察力のあるリーダーシップ」

「成熟した英語を駆使せよ:哲学のあるリーダーシップ」
長きに渡って様々な国で企業経営に関わり、多国籍企業の言語として英語の重要性を痛感した。グローバル化した企業活動のためには会社のある場所がインドであろうが中国であろうが、ブラジルであろうがドイツであろうが、英語は自社と組織の言語とならなければならない。


Part4 Innovation 『絶え間なく変わり続けなければならない』
Credo15 『会議が多く、会議が長い会社は潰れる』

潰れる会社は会議が多く、しかもその時間が長い。多くの会社が会議をするのに業務の三分の一に当たる時間と精力を消費している。社員はプレゼンの準備と発表で多くの時間を割いている。いざ会議が始まると、他人のプレゼンを聞いたり自分の出番を待ったりするせいで疲労困憊する。私はこの点を改善するため、発表者は自分の発表時間だけに入り、発表が終わったら部屋を出させることにした。


Credo16 『肯定的な監査が会社を救う』

監査チームは企業の体系的な運営と管理のために必ず必要となる組織だ。私が作った監査チームは業務監査と情報提供、また中継業者や消費者たちの不満や投書などに対する調整役も行うようにした。

私は監査チームよりずっと早くに法律支援チームを作った。我が社には弁護士資格を持つ社員が三名勤務していた。一人は債券回収、一人は法律書類準備、一人は訴訟担当であったと記憶している。このようにした理由はインドは韓国よりも訴訟が多いためだ。


Credo17 『固まれば死に、離れれば助かる』

現地法人が成功するためには「現地市場のニーズ」「設計の現地化」「部品と製品の現地化」などが達成されなければならない。これがなくては競争力も持てない。部品を現地化しなければならないのに現地での設計能力が追いつかないのであれば、現地化は失敗である。本社の設計による本社から提示された部品では、現地化に限界が出てしまう。
このような場合、思い切って本社の設計から離れなければならない。このため私はインドの環境で必要な特殊な状況を韓国開発チームに要求するよりも、現地の研究開発チームが直接設計できるよう、人員を補強し、能力を上げる研究開発の独立を大きな目標とした。

ソニーは数年前にインドからテレビ工場を撤収した。そこで、ソニーの研究開発チームで勤務していた技術者を採用するために面接を行った。しかし、残念ながら彼らの技術レベルは我々の期待以下だった。これはどういうことか。ソニーの主要の研究開発は本社で全て行っており、現地の研究チームは現地生産の為の最小限の補助機能しか持っていなかったということを証明しているのだ。


Credo18 『グローバル化は徹底した現地化の成果である』

現地人戦略により私はインド人に生産、管理、企画、広報、販売等を任せた。我が社の場合インド人社員は3000名、韓国人社員数は全て合わせても23名だった。これは徹底した現地人中心の現地化経営哲学による賜物だ。

現地化は研究開発においても重要な精神だ。我々は現地市場に合った製品を開発、生産するためには自体的な研究開発の人材が必要だと判断し、独自の研究開発能力を確保した。それにより、現地で生産する製品に独特な機能を多く追加することが出来、このような特徴やメリットにより、良い価格で多くを売ることが出来た。


Credo19 『販売の運命は購買に掛かっている』

会社経営の初期においては、我が社の購買価格が良くないと言って取引きを拒む協力会社が多かった。しかし代価支給という部分において間違いなく信頼出来るという名声を得た途端、多くの会社が我々との取引を希望してきた。更に一歩先に進み、優良協力会社には代金を前もって支給する前払い制度を実施した。


Credo20 『苦しい時ほど変わることで生き残る』

インド工場では1997年の会社設立以来、韓国本社が作った色々な革新ツールを受けて教育を進めてきた。初期には5S、6ToolsTDR運動を、また数年前から人気を集めている「6シグマ運動」、そしてトヨタの「看板システム」「ブルーオーシャン」など多様な革新法が紹介され、実行して来た。


Credo21 『社員より会社が先に変わらなければならない』

革新を成功させるためには先に会社が変わらなければならない。それは、会社が構成員の為の制度や設備、福利厚生の部分で変わっていることを社員が感じなければならないということだ。万が一、社員らに革新を要求しながら会社が運営を旧態依然のままでいたのなら、革新は成功しない。

毎年の市場の価格下落に備え、材料費節約を通じて原価節減を実施してきた。このような材料費節減は研究開発チームが設計を変更して部品を減らしたり、相対的に質が良く安い部品を使用することで購入先を変え、似たような品質で安い部品を購入するという方法で実現した。しかし、こういった方法で材料費を節減することには限界があった。そこで始めた運動が「浪費削減運動」である。


Credo22 『失敗した者に福があるとしたら、大きな学びがあるからだ』

会社経営初期の約三年間は販売とマーケティングの権限をインド人副社長一人に与え、彼が全権を持って組織を総括するようにした。しかし、時間が経つにつれ権限集中に伴う副作用が深刻に発生した。その理由は過度に権限委任が集中するとその人に異常な期待が寄せられ、更にそれに伴って大きな失望を生むからだ。

この失敗の経験を土台に私の経営哲学は完全に変わった。権限集中ではなく、権限委任の哲学を体得したのだ。


Part5 Marketing 『数字が人格だ』
Credo23 『格好のいいマーケティングは要らない』


通常は効果的なマーケティング業務のために外部のコンサルティング会社を利用することが多い。しかし、その会社に依存しすぎるのは禁物だ。有名で大きなエージェントに素晴らしいデザインや優れたアイディアがあるという固定観念も捨てなければならない。小さくとも我々の仕事に命を賭け、一所懸命に取り組む会社が本当に良いアイディアを創り出すことが出来る。

フィリップス、ソニー、パナソニックなど、数々の世界屈指の電子会社が我が社より先にインドに進出し、事業を展開していた。しかし、彼らはインドで苦戦を強いられ、特にソニーは失敗を続けていた。このことから、我々は本格的なマーケティング戦略を立てるのに先立ち、まずはそれらの失敗原因の分析から始めた。その時分かったのは、ソニーが製品広告を新聞やテレビにだけ頼っているということだった。このマーケティング広報戦略には問題があった。
インドは韓国より三十倍も広い国土でありながら、交通網の発達していない国だ。このような市場環境において、机の前で座ったまま媒体広告に依存するマーケティング戦略では成功できないのは明らかだった。このような問題点を突き止めた我々は、現場と地域の中まで浸透する「足で回るマーケティング戦略」を樹立した。
まず、大都市にある代理店から足を使って飛び回った。

過去10年間、私はインドの100以上の年を訪問した。毎週水、木、金曜日は地方に出張した。

足で回るマーケティングの結果、インド全域で40個の支社と70以上の営業所、小規模支社まで合わせると186個の営業網を構築した。そして、流通網は1万6千500箇所に達した。この数値はインドの電子企業よりも多くのネットワークを持つことを意味している。


Credo24 『逆走するマーケティングを試せ』

多くの会社が販売を拡大化するために「少数の大きな取引先」を求める。管理しやすいからだ。しかし私は「多数の小さな取引先」を選んだ。多数の小さな取引先は、管理はし辛いものの、取引上のパイプが多く、全国の至る所でより多くの顧客と接触することが出来るからだ。


Credo25 『マーケティングは新しい用語との闘いだ』

海外法人の場合、韓国本社の設計を少し修正して使うことが多い。そのようなやり方だと、独自的に現地に合った特徴と長所を企画段階から反映させるのはそう簡単なことではない。 もともとある機能をいくつか総合して独特な用語で表示し、そのいくつかの用語を集合させてより大きなコンセプトを作ることこそがマーケティングといえる。マーケティングは、独特な用語や概念を誰が上手く作るかということにその成功の可否が掛かっている。

私は人が行きたがらない所へ一所懸命通うことこそが差別化だと信じてきた。そのため、そのような奥地に支社を作り、営業所を開設した。都市は競争が熾烈で利益が少ない。しかし田舎は相対的に多大な努力を要するが、都市よりも競争が少ないため、利益が大きい。


Credo26 『ブランドに対する消費者認知度を上げよ』

一つ目に、市場で一位になることだ。一位が重要となる理由は、常に新聞、雑誌、テレビで注目を浴び、そうなることで費用をかけずに莫大な宣伝のチャンスを自動的に手に入れられるということだ。

二つ目に、良いブランドイメージを保つために、人情を忘れてはならない。

三つ目に、社員を最も重要な顧客として考えなければならない。

最後に、会社が良い哲学を持たなければならない。


Credo27 『アフターサービスがマーケティングの完成だ』

販売を持続させながらアフターサービスセンターの稼動をスタートさせた。我々が立てたアフターサービス戦略には三つの原則があった。まず24時間サービスを提供すること、家庭訪問を原。則にすること、そして最後に、故障した製品は1時間以内に修理することを原則にした。


エピローグ 『両手で経営せよ』

「インタビューを通じて見た私の経営哲学」
私はこれまで経営者として数多くの質問を受け、それに答えるたび毎に自らの経営哲学を確立していった。以下は、今まで受けた質問とその答えをまとめたもので、意味のある作業だと考える。

質問1 「インドで成功した理由は何でしょう?」

質問2 「扱い難いインド人従業員を上手く管理し、成果を挙げた秘訣は?」

質問3 「30〜40年の歴史あるインド企業を抑え、早くから市場でトップとなった理由 は?」

質問4 「先に入っていた日本企業が失敗、工場を撤収、市場での競争力を失った原因は?」

質問5 「中国企業がインド市場を攻略しようとしているが、これについてどう考えているか?」

質問6 「インド進出のためには、単独或いはインド企業との連携、どちらが良いか?」



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これらの6つの質問の答えが知りたい方、その他の質問については、下記の連絡先にお気軽にご相談ください。
(但し、法人のみ)

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〒135-0064 東京都江東区青海2−4−32
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